SWEETFILLA / 2026-04-13

産後1年でもくしゃみが怖かった私が、骨盤底筋ケアで変わった3ヶ月

東急東横線で渋谷へ向かう電車内、くしゃみのたびにビクッとする産後1年目。尿漏れは「仕方ない」ではなく、骨盤底筋ケアで変えられるもの。日本産科婦人科学会の根拠とiroha FITで試した3ヶ月の記録。


打ち合わせの途中、くしゃみをして席を立った

Dana Tentis via stocksnap

横浜の自宅から東急東横線に乗って渋谷まで約40分。電車の中でスマホを開いて校正の続きをしながら、午後2時半からの打ち合わせの段取りを頭の中で組み直していた。3社のPR担当と美容記事の方向性を話し合い、18時には保育園に迎えに行く。そのタイムラインを何度も確認しながら渋谷駅のホームに降りた。

打ち合わせが始まって30分。会議室でくしゃみが出た。

瞬間、体が勝手に反応した。会話の切れ目を待って「少し失礼します」とトイレに向かった。毎回こうだ。くしゃみ、笑い声、重いものを持つ瞬間——そのたびに私は少しだけ怖くなる。産後1年が過ぎていた。


※この記事は医学的・一般的情報を提供するものであり、診断・治療を目的としません。症状が続く場合は医師・婦人科・かかりつけ医に相談してください。

産後の尿漏れとは何か——骨盤底筋という「見えない床」の話

Direct Media via stocksnap

産後の尿漏れ(腹圧性尿失禁)とは、くしゃみや咳、運動など腹圧がかかった瞬間に尿が漏れる状態を指す。 日本排尿機能学会の疫学調査では、経膣分娩後の女性の約30〜40%が産後に腹圧性尿失禁を経験すると報告されている。

原因の中心にあるのが骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)と呼ばれる筋肉の集合体だ。膀胱・子宮・直腸を下から支える「床」のような役割を担っているが、妊娠・分娩によって大きなダメージを受ける。特に経膣分娩では、胎児が産道を通る際に筋肉や神経が引き伸ばされ、一時的に機能が著しく低下する。

産後6週間の産褥期に自然回復する部分も多いが、骨盤底筋の完全な回復には適切なケアなしでは数ヶ月から1年以上かかることがあると言われている。私が1年経っても「くしゃみが怖い」状態だったのは、回復を自然任せにしていたからだった。

「産後はみんなそうだから」という呪いを解く

普段、医学監修付きの美容・健康記事を編集している仕事柄、医療情報の扱いには慣れているつもりだった。それでも自分のこととなると、「産後はみんな尿漏れする」「そのうち治る」という言葉に甘えていた。

産院の退院時に骨盤底筋体操のプリントを渡されたのを覚えている。B5の紙1枚に「お腹に力を入れながら膣を締める動作を10秒×10回」と書いてあった。2週間続けて、忘れた。

生後3ヶ月まではほぼ毎晩授乳で起き、記憶が飛んでいる時期がある。自分の体を気にかける余裕なんてなかった。でも産後1年が過ぎた今、私の骨盤底筋は「産院のプリント1枚」で放置されたままだった。

なぜ産後に尿漏れが起きるのか——医学的に整理する

腹圧性尿失禁が起きるメカニズムを簡単に整理しておく。

通常、膀胱内に尿が溜まった状態でくしゃみなどをすると、腹圧が膀胱にかかる。その圧力に対抗するように、骨盤底筋と尿道括約筋が反射的に収縮し、漏れを防ぐ。この「反射」が機能しなくなるのが腹圧性尿失禁だ。

日本産科婦人科学会の資料によると、分娩による骨盤底筋へのダメージは、赤ちゃんの体重が大きいほど、分娩時間が長いほど、器械分娩(吸引・鉗子)を用いるほど大きくなる傾向があると報告されている。私の場合は3,580gで吸引分娩だった。

また、エストロゲン(卵胞ホルモン)の低下も骨盤底筋の回復を遅らせる要因とされている。授乳中はプロラクチンの影響でエストロゲンが抑制されるため、授乳期間が長いほど筋肉の回復に時間がかかる場合があるというデータもある。断乳したのが産後11ヶ月だった私は、まさにこのケースに当てはまっていた。

「ケーゲル体操をやれば治る」——そんなに単純じゃなかった

産後の尿漏れ対策として最もよく知られているのがケーゲル体操(骨盤底筋トレーニング)だ。膣や肛門を締める動作を繰り返すことで骨盤底筋を強化する方法で、日本産科婦人科学会のガイドラインでも産褥体操として早期開始が推奨されている。

産後から断続的に試みていた。ただ正直に言うと、「本当に正しくできているのか」がずっとわからなかった。骨盤底筋は目で見えないし、力が入っているかどうかの感覚が掴みにくい。

「正しくできていないケーゲルは、むしろ骨盤底筋を過緊張させて逆効果になることもある」——これは産後12ヶ月を過ぎたタイミングで受けた、クリニックフォアのオンライン婦人科で初めて聞いた話だった。スマホから予約して、昼休みの15分でビデオ診療を終えた。

担当医から教わったのは、骨盤底筋には「弱化タイプ」と「過緊張タイプ」の2方向があり、対処法が違うということだ。私は後者——締まりすぎているタイプだった。

オンライン婦人科で初めて、正直に話せた

「くしゃみのたびに尿漏れが怖い」という話を人にするのは、仕事上の関係者でも家族でもなかなかできない。夫には伝えていたが、具体的な解決策が返ってきたわけでもなかった。

クリニックフォアのオンライン婦人科は、自宅のリビングから、子どもが昼寝している間に話せた。それだけで心理的なハードルが大幅に下がった。

担当医から提案されたのは、3点セットだった。

  • リラックス型のケーゲル体操(過緊張タイプには締めるより「緩める」動作が先)
  • 骨盤底筋トレーニングデバイスの活用(正しいフォームを数値で確認するため)
  • エクオールの摂取検討(断乳後のエストロゲン回復サポートとして)
  • 2番目について、私はiroha FITを選んだ。

    iroha FITを3ヶ月使って気づいたこと

    iroha FITは、日本のフェムケアブランド「iroha by TENGA」が開発した骨盤底筋トレーニングデバイスだ。医療機器ではなくセルフケアアイテムとして位置づけられているが、専用アプリと連動してトレーニングをガイドし、「正しく力が入っているか」を数値化して確認できる点が、感覚だけに頼ったケーゲル体操との大きな違いだ。

    使い始めて最初に驚いたのは、「自分が全然骨盤底筋を使えていなかった」という事実だった。アプリの画面上で、私の骨盤底筋の反応はほぼフラットだった。産後1年間、なんとなくケーゲルをやっているつもりで、まったく機能していなかった。

    週4〜5回、1回10分のトレーニングを3ヶ月継続した。

    変化が出始めたのは2ヶ月目。くしゃみのたびに感じていたあの「怖さ」が少しずつ薄れてきた。完全に消えたわけではないが、ナプキンを手放せる日が増えた。これは私個人の体験であり、効果には個人差がある。ただ、「正しいフォーム」で骨盤底筋を使えるようになってから、手応えは明らかに変わった。

    ケーゲル体操、産後いつから始めていいの?

    Q: 産後すぐにケーゲル体操を始めても大丈夫ですか?

    A: 経膣分娩・帝王切開ともに、産後24〜48時間後から軽いケーゲル体操を始めることは一般的に問題ないとされている。 ただし、会陰切開や裂傷があった場合は傷の状態に合わせて開始時期を医師に確認するのが原則だ。日本産科婦人科学会「産科診療ガイドライン2023」でも、骨盤底筋体操は産褥体操の一環として早期から推奨されている。産後1ヶ月健診でのチェックが勧められているが、育児の疲弊の中で先送りになるケースが圧倒的に多い。私もそうだった。

    産後1年以上の尿漏れは「放置でいい」の?

    Q: 産後1年以上経っても尿漏れが続いています。自然に治りますか?

    A: 軽度の腹圧性尿失禁でも、適切なケアなしに自然消失するケースは限られると言われている。 特に産後1年以上経過している場合、骨盤底筋の弱化が固定化し始めている可能性が高い。

    泌尿器科・婦人科では、骨盤底筋リハビリテーション(PFMT: Pelvic Floor Muscle Training)が第一選択の保存療法として位置づけられており、Cochrane Database of Systematic Reviews(2018年)でも複数の無作為化比較試験においてその有効性が確認されている。「産後だから仕方ない」と先延ばしにすることで、将来的に骨盤臓器脱(子宮や膀胱が膣から脱出する状態)のリスクが上がる可能性があることも、婦人科医から指摘された。

    エクオールと骨盤底筋——女性ホルモンと筋肉の接点

    Q: 授乳終了後にエクオールを摂ることに意味はありますか?

    A: エストロゲン様作用を持つエクオールが骨盤底筋を含む骨盤周囲の結合組織の弾力性維持に関与する可能性は研究されているが、産後の尿漏れに対する直接的な有効性を示す確立されたエビデンスは2026年現在まだ限られている。 ただし、断乳後にエストロゲンが回復していく過程での補助的なサポートとして、婦人科医に相談のうえ検討する価値はあると言われている。

    私は断乳後にエクエル(大塚製薬)のサプリを婦人科医の助言で始めた。骨盤周辺の「しっとり感」が戻ってきた気がしているが、これはあくまで私の主観的な変化であり、効果を保証するものではない。

    帝王切開だった場合も骨盤底筋ケアは必要?

    Q: 帝王切開で産んだので骨盤底筋は大丈夫、と思っていていいですか?

    A: 帝王切開でも骨盤底筋ケアは必要と考えておくほうがいい。 産道を通らないため経膣分娩より骨盤底筋への直接的ダメージは少ないとされているが、妊娠中の9ヶ月間、子宮の重みが骨盤底筋にかかり続けること自体が大きな負荷になる。腹部の術後瘢痕が骨盤底筋群の機能連鎖に影響する場合もある。帝王切開後は特に、開始時期と方法を医師に確認してからケアを始めることが重要だ。

    本当に必要だったのは「情報」ではなく「相談できる15分」だった

    産後の尿漏れについて、検索すれば情報はある。ケーゲル体操の動画も無数にある。でも1年間放置してしまったのは「情報がなかったから」ではなかった。

    忙しかったし、恥ずかしかったし、「みんな通る道だから」と自分に言い聞かせていた。ライフスタイル誌の編集者として医学記事を毎月作りながら、自分の骨盤底筋は産院のプリント1枚で止まっていた。

    オンライン婦人科に繋がって初めて、自分が「過緊張タイプ」だと知り、正しい方向のケアを始められた。クリニックフォアのオンライン婦人科は、産後の骨盤底筋・尿漏れの相談に対応しており、スマホで予約して昼休みや子どもの昼寝中に受診できる。 初診でも自宅からでも繋がれる仕組みが、私には1年遅れで知った「もっと早く使えばよかった」サービスだった。

    iroha FITは骨盤底筋の動かし方を可視化するセルフケアデバイスとして今も継続中だ。産後の尿漏れ対策に骨盤底筋デバイスを使いたいなら、まずオンライン婦人科で「自分がどちらのタイプか」を確認してからの活用を強くすすめたい。方向を間違えたトレーニングは時間の無駄どころか逆効果になりかねない。

    産後の尿漏れは「仕方ない」でも「恥ずかしい」でもない。ケアに値する、ちゃんとした体の問題だ。 1年後悔した私が言うのだから、これは確かだ。

    参照資料

  • 日本産科婦人科学会「産科診療ガイドライン2023」産褥体操・骨盤底筋ケアの項目
  • 日本排尿機能学会「女性下部尿路症状診療ガイドライン(第2版)」
  • Cochrane Database of Systematic Reviews. “Pelvic floor muscle training for urinary incontinence in women.” 2018.
  • 厚生労働省「健康日本21(第三次)」女性の健康づくりに関する記述
  • 大塚製薬 エクエル製品情報・大豆イソフラボン/エクオールに関する研究資料
  • NEXT STEP

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