夜11時23分、千葉の戸建て2階の寝室。
リビングから韓国ドラマの音が漏れてくる。夫が見ているやつだ。結婚6年目、私は33歳、夫は31歳。同じ家に住んでいて、毎朝同じテーブルでコーヒーを飲んで、週に4日は夕食を一緒に食べている。でも今夜も、この部屋には私一人。
スマホの画面を暗くして、天井を見ながら、指で数えた。
去年の9月。1年7ヶ月前。夫と最後に身体的に触れ合った夜。それ以来、ハグもない。手も繋がない。寝るときは私がベッド、夫がリビングのソファという夜も増えてきた。「おやすみ」は言う。喧嘩もしていない。なのに、なぜか毎月の生理がずれるようになっていた。
その月、ついに生理が10日以上遅れた。
最初は「パートのシフトが増えたせいかな」と思った。義母との件でバタバタしていたし。でも翌月も、また次の月も、周期が乱れたまま戻らない。肩こりも悪化して、朝起きたときの頭の重さが一日中抜けない。眠れているのに、眠れていない感じ。体がずっと、薄い霧の中にいるみたいだった。
内科で「ストレスでしょう」と言われ、婦人科に行ったら「ストレス性の月経不順です」と診断された。先生に「ストレスの原因に心当たりはありますか」と聞かれて、「特に……」と答えた。夫とのことなんて、言えるわけがなかった。
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※この記事は医学的・一般的情報を提供するものであり、診断・治療を目的としません。症状が続く場合は医師・婦人科・かかりつけ医に相談してください。
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— セックスレスとは、日本性科学会の定義で「特別な事情なく、1ヶ月以上性交渉がない状態」を指す。 日本家族計画協会の「男女の生活と意識に関する調査(2022年版)」では、既婚者の約45%がセックスレス状態にあると報告されており、特に女性においては「慢性的なストレス反応」「ホルモンバランスの乱れ」「自己評価の低下」が関連症状として挙げられている。
産婦人科で初めて聞いた「ストレス性」という三文字

「ストレス性」という言葉を聞いたとき、私は少しホッとして、少し傷ついた。
ホッとしたのは「器質的な病気ではなかった」という安堵。傷ついたのは「じゃあ、そのストレスって何?」という問いが、もう答えを知っているような形で目の前にあったから。
月経不順とストレスの関係は、医学的によく知られている。精神的ストレスが持続すると、脳の視床下部・下垂体系の機能に影響が及び、エストロゲンやプロゲステロンの分泌バランスが乱れることがある。日本産科婦人科学会の「機能性月経異常に関するガイドライン」でも、ストレス・睡眠障害・体重変動が月経周期異常の主要な誘因として明記されている。
セックスレスが「ストレス要因」になり得るとは、婦人科の先生は直接言わなかった。でも帰りの京成線の中でスマホを開いて調べていたら、「慢性的な身体的接触の不足は、オキシトシン(愛着ホルモン)の分泌低下と関連し、不安感・孤立感・睡眠の質の低下に繋がる可能性がある」という海外の研究論文にたどり着いた。
あの頭の重さ、眠れているのに眠れていない感覚、原因の一端はここにあったのかもしれないと、初めて点が線に繋がった気がした。
会話も夕食も普通なのに、なぜこんなに消耗しているのか

セックスレスの辛さは、「関係が破綻している」わけではない点にある。
夫とは会話がある。昨夜は近所の中華料理屋が閉店するという話で少し盛り上がった。夕食はほぼ毎日一緒。家のローンは共同名義、家計も共有、生活は「回っている」。喧嘩もない、怒鳴り合いもない。でも触れ合いがない。
身体的な接触がない関係が長期化すると、女性は「自分の存在そのものへの疑問」を持ちやすくなる。 「自分はまだ女性として機能しているのか」「私の体は、誰かに必要とされているのか」という問いが、夜中にふっと出てくる。私はまさにそれだった。33歳の自分の体が、まるで性別をなくしていくような感覚。友達には絶対言えない。母にも言えない。誰にも言えない。
それが婦人科の診断から3週間後、「これは夫婦の問題である前に、私自身の体と心の問題として向き合う必要がある」という気づきに変わった。
【中間まとめ】セックスレスは「夫婦の問題」に見えて、実際には女性の心身に直接影響する健康課題だ。月経不順・睡眠障害・慢性的な疲労感・自己評価の低下——これらはすべて、長期的な親密さの欠如がトリガーになり得る。ホルモン的アプローチとセルフケアの両輪が、体の状態を取り戻す起点になる。
「セックスレスはどのくらいで体に出ますか」と夜中に検索した
Q: セックスレスが始まってどれくらいで、体調不良として現れ始めますか?
A: 個人差が大きいが、3〜6ヶ月以上継続すると身体症状として現れ始めるケースが多いとされている。
慢性ストレスによるコルチゾールの持続的な高値は、エストロゲン・プロゲステロンの産生に干渉する可能性があり、これが月経不順や睡眠障害として現れやすい。オキシトシンの低下は不安感・孤独感の増幅と関連することが複数の研究で示されており、「身体的な接触のなさ」自体が自律神経の乱れを引き起こす要因になり得る。私のケースは1年以上経ってから症状が顕在化したが、潜在的なストレスはそれより早く蓄積していた可能性が高い。
Q: セックスレスによる体調不良は、婦人科で相談できますか?
A: できる。月経不順・睡眠の質・ホルモンバランスの乱れはすべて、婦人科の相談範囲だ。
「夫とのことを話さなければならない」と思うと腰が重くなるが、「月経の周期が乱れている」「眠れない感じが続く」「疲労が抜けない」という体の症状を中心に話せば十分で、医師は適切な検査(ホルモン採血・超音波など)を提案してくれる。原因の詮索より先に、自分の体の現在地を把握することが最初の一歩だ。
「夫への切り出し方がわからない」という壁の越え方
Q: セックスレスを解消したいけれど、夫への切り出し方がわからない。
A: 「相手への要求」ではなく「自分の体調の話」として入ると、受け取られやすい。
「最近、ホルモンバランスが乱れているみたいで、婦人科で診てもらった」「月経が不規則になってきたから、生活リズムを整えたい」——こういう入り口は、相手を責める文脈にならないため、防衛反応が起きにくい。パートナーシップの問題としてではなく「私の体の話」として共有することで、自然と二人の距離が縮まるきっかけになることもある、と性カウンセラーへのインタビュー記事で読んだ。
ただしこれは万能ではない。夫の側に性欲減退・回避傾向が強い場合は、専門のカップルカウンセリングや性カウンセリングへの相談が、遠回りに見えて最も早い道のことが多い。
セルフケアとして始めた、小さな「取り戻し」
婦人科で検査を受けた翌週、私はいくつかのことを始めた。
ひとつは、自分の体を「自分の体として扱い直すこと」。
聞こえはよいが、要するに「ずっと放置していたフェムゾーンのケアをちゃんとやる」という話だ。骨盤底筋のストレッチ、入浴時の保湿、デリケートゾーンのpHを意識したケア。夫に触れられない時間が長くなると、私は自分の身体に触れること自体を無意識に避けていた。それが「自分の体との断絶感」に拍車をかけていたと、今は思う。
もうひとつは、irohaを試してみたこと。
iroha(イロハ)は、医療機器的にクリーンなデザインと丁寧なブランドコンセプトが特徴で、「フェムテックの一環としてのセルフケアグッズ」として多くの女性誌でも取り上げられている。私にとっては、夫との関係を埋めるためではなく「自分の体の感覚を確かめ直す」ためのツールとして使い始めた。2週間後、夜の入眠が少し変わった気がした——これは個人の感想であり、効果を保証するものではないが、少なくとも「自分の体に向き合う習慣」が生まれたことは確かだ。
エクオールとホルモンサポートという選択肢
婦人科の先生に「エストロゲン様の働きをもつ成分を食事から補うのも一つの選択肢」と言われ、調べたのがエクオールだ。
エクオールは、大豆イソフラボンが腸内細菌によって変換されてできる成分で、エストロゲンと構造が似ており、ホルモンバランスの乱れをサポートする可能性があるとされている。日本産科婦人科学会もエクオールと女性の健康に関する情報を公開しており、更年期前の女性のホルモン的な揺らぎへのサポート効果が研究されている。 ただし、腸内環境によって産生能力に個人差があり、すべての人に同等の影響があるわけではない点は押さえておく必要がある。
私は毎朝、白湯とともにエクオールのサプリを1粒飲む習慣を3ヶ月続けた。体への作用を数字で計ることはできないが、「ホルモン的な揺らぎへの対策を何かしている」という事実が、精神的な安定感に繋がったのは確かだと思っている。
「誰にも言えない」を少しだけ溶かす場所
友達には言えない。母には絶対に言えない。SNSに書けるわけもない。
でも婦人科の先生には、「月経が乱れている」という事実だけを話せた。それだけで十分だった。
通院のハードルが高いなら、婦人科オンライン診療という選択肢がある。自宅から、夫に気づかれることなく、スマホ一台で婦人科の医師に相談できる。千葉から都内の婦人科に行く時間が取れないときでも、予約から問診・処方箋発行まで完結するサービスが増えており、「月経不順が続いている」「疲れが抜けない」という入り口でも丁寧に対応してくれる医師が多い。 夫とのことを全部話さなくていい。体の現状を診てもらうだけで、次の一手が見えてくる。
夜11時、あの天井の前で
あれから3ヶ月が経った。
夫との関係は、劇的には変わっていない。セックスレスはまだ続いている。でも、私は少し変わった。自分の体を診てもらうこと、フェムゾーンのケアを再開すること、ホルモンバランスに目を向けること——それを始めてから、あの「眠れているのに眠れていない感じ」は半分くらいになった。頭の重さも、肩の張り方も、少しだけ和らいだ気がしている。
婦人科で聞いた「ストレス性」という言葉は、傷でもあったけど、出口でもあった。「夫婦の問題」として固まっていたものが、「私の体の問題」として動き始めた瞬間だった。
もし、あなたも「1年以上身体的な接触がない」「最近生理の周期がずれてきた」「理由のわからない疲労感が続く」という状態なら——まず自分の体の状態を把握することから始める価値がある。 婦人科への相談、エクオールの試用、irohaによるセルフケア、オンライン診療の活用。どこから手をつけてもいい。「夫婦の問題が解決しないと、自分の体のことは後回し」という思い込みを、今日だけ脇に置いてほしい。
あなたの体のことは、あなたが一番先に守っていい。
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参考文献・引用元