夜10時43分、渋谷駅から乗ったタクシーの中で、突然涙が出た。
理由はなかった。クライアント提案は成功していた。課長にも褒められた。なのに、スマホの画面をぼんやり見ながら、涙がぽろぽろと落ちていた。
沙織は28歳の営業職。彼氏とは3年目で、最近はふたりとも帰宅後に無言でスマホをいじっている時間が増えた。別に大きな問題はないはずだった。でも、ここ3ヶ月、生理前になると決まって「理由のない感情の爆発」が来る。
「これ、わたしの性格の問題じゃない気がする」と思ってPubMedを漁ったのが、今年の2月だった。
— プロゲステロン不足とは、排卵後に黄体から分泌されるはずのプロゲステロン(黄体ホルモン)が十分に産生されない状態を指す。黄体期(生理前10〜14日間)に不足すると、気分の変動・不眠・浮腫・月経不順などの症状として現れやすいとされている。
※この記事は医学的・一般的情報を提供するものであり、診断・治療を目的としません。症状が続く場合は医師・婦人科・かかりつけ医に相談してください。
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生理前の「あの感じ」は、ホルモンの話だった

プロゲステロンは「妊娠を維持するホルモン」として知られているが、役割はそれだけではない。脳に作用してセロトニンやGABAの受容体を調整し、精神的な安定を保つ働きがある。
つまり、プロゲステロンが足りないと、脳の「落ち着け」シグナルが弱くなる。不安、イライラ、涙もろさ。こういった症状が生理前に集中するのは、偶然でも性格でもなく、ホルモンの変動が引き起こす生理的な反応だ。
プロゲステロン不足が疑われる主な症状:
沙織の場合、7項目中4つに当てはまった。「PMSかと思っていたけど、これって違う話なの?」と最初は混乱したという。PMS全般とプロゲステロン不足は重なりつつも別の概念で、プロゲステロンの不足は血液検査で数値として確認できるという点が重要だ。
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血液検査って意味あるの?——沙織が実際に受けた検査の結果

プロゲステロンの血中濃度は、排卵後7日前後(生理予定日の約1週間前)に測定するのが最も正確とされている。この時期を外すと「正常範囲」として見逃されることがある。
日本産科婦人科学会の診療指針では、黄体期中期の血清プロゲステロン値が10ng/mL未満の場合、黄体機能不全が疑われるとされている(参考:日本産科婦人科学会雑誌)。
沙織は近所の産婦人科で、直近3ヶ月の生理開始日をメモしたスマホのメモ画面を持参して受診した。「生理前に感情が不安定で、高温期が短い気がする」と問診で伝えると、黄体期中期に採血をすることになった。結果は8.2ng/mL。
数値として出ると、「性格のせいじゃなかった」という安堵と、「じゃあどうすればいい」という次のステップが同時に見えてきたという。漠然とした不調が、具体的な数字になった瞬間だ。
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これってただのストレス?——コルチゾールとの泥沼関係
「最近仕事がきついから」で片付けたくなる気持ちはわかる。でも、慢性的なストレスはコルチゾール(ストレスホルモン)の分泌を増やし、コルチゾールとプロゲステロンは同じ前駆物質(プレグネノロン)を巡って競合する可能性が研究で示されている。
つまり、ストレスが続くほど、プロゲステロン産生のための「材料」がコルチゾールに奪われてしまう可能性がある。PubMedではこれを「プレグネノロンスティール」と関連づける研究が複数報告されている。
プロゲステロン不足の背景にある現代女性の生活パターン:
沙織の生活を振り返ると、帰宅後に彼氏と並んでスマホを見ながら夜0時過ぎに寝て、朝6時45分に起きる日々が3ヶ月以上続いていた。残業が続く週はコンビニのサラダチキンと缶チューハイで夕食を済ませていた。
「生活が原因か、ホルモンが原因か」を考えるより、両方が絡み合っているという前提で動くのが現実的だ。
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「なんとなく不調」から抜け出す最短ルート
ここで要点を整理する。プロゲステロン不足は、①排卵がきちんと起きていない、②排卵後の黄体の機能が弱い、の2パターンが主な原因だ。どちらも食事・サプリ・生活習慣で一定のサポートが期待できるとされているが、重度の場合は婦人科での治療が必要になる。自分のパターンを知らずにサプリを飲み始めるのは、地図なしで道を歩くようなものだ。
まず血液検査で現状を把握すること。これがすべての対処の出発点になる。症状の数を増やしても、検索を重ねても、「自分の数値」がない限り対処は的外れになりやすい。
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エクオールって本当に意味あるの?——サプリの本音評価
注目されているのが大豆イソフラボンとその代謝産物「エクオール」だ。エクオールはエストロゲン様の弱い活性を持ち、ホルモンバランスの乱れを緩やかにサポートする可能性が一部の研究で示されている。
ただし個人差が大きい。日本人女性の約50%は腸内細菌の組成上、大豆食品を摂取してもエクオールを自力で産生できないとされている(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の情報)。つまり、豆腐や納豆を毎日食べても、エクオールが体内で作られていない可能性がある。
エクオール サプリメントは、エクオールを直接摂取できるサプリメントで、大豆食品を多く摂っても体内で産生できない人への選択肢として婦人科でも紹介されることが増えている。黄体期のコンディション管理の一環として継続して摂取する価値があると言われているが、効果には個人差があり、サプリはあくまでセルフケアの補助として位置づけるのが現実的だ。
食事面ではビタミンB6(鶏むね肉・バナナ・さつまいもに多く含まれる)がプロゲステロン産生のサポートに関与する可能性も報告されている。沙織が帰り道のファミマで毎晩サラダチキンを買い続けているのは、あながち間違いではなかった。
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「産婦人科って妊娠した人が行くところでしょ?」という誤解
Q: 妊娠の予定がなくても婦人科に行っていい?
いい。生理不順・PMS・ホルモンバランスの相談は産婦人科・婦人科の正式な診療範囲だ。「妊娠の予定はないが、生理前の不調を相談したい」という受診理由は何も珍しくない。むしろ、婦人科の外来患者の相当数がこうした相談を目的に来院している。
Q: 受診前に自分でできることはある?
ある。まずスマートフォンのアプリ(ルナルナ等)と基礎体温計を使って2〜3ヶ月間の基礎体温を記録する。高温期の長さ(10日以上あるか)とピーク体温(36.7℃以上か)を確認するだけでも、黄体機能の目安になる。直近3ヶ月の生理開始日と終了日のメモも持参すると問診がスムーズだ。
Q: オンライン診療でも対応してもらえる?
Mederi(メデリ)婦人科オンラインなら、スマートフォンから予約でき、昼休みや帰宅後の隙間時間に産婦人科医に相談できる。ピル処方・PMS相談・ホルモンバランスの疑問など、対面では話しにくい内容もやり取り可能だ。「まず現状を数値で知りたい」という段階でも使いやすい設計になっており、沙織のように「何科に行けばいいかもわからない」状態からでも始められる。
Q: 検査して「異常なし」だったら?
それはそれで重要な情報だ。検査で数値的な異常が出ない場合でも、生活習慣・栄養状態・睡眠の見直しで症状が改善するケースは多い。「異常なし=問題なし」ではなく、「今わかる範囲で検査値の異常はない」という事実として受け取り、食事・睡眠・サプリのアプローチに移行する判断材料にできる。
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データを持つと、感情が変わる
沙織は今、毎朝起き抜けに体温を測り、アプリに記録するようになった。数字があると、「今日の感情はホルモンの波なのか、それとも本当に何かがおかしいのか」を冷静に分けて考えられるようになったという。
感情を管理しようとするのではなく、体のデータを読む習慣が、自分自身への理解を深める。タクシーの中で泣いたあの夜を、「よくわからない自分」として記憶するのではなく、「プロゲステロンが8.2ng/mLだった月」として記録できるようになった。
もしあなたが生理前になると別人のように落ち込み、眠れず、パートナーとの親密な時間も気づけば減っているなら——まず基礎体温の記録を2週間続けること、そして婦人科での血液検査を検討することを勧める。
Mederi(メデリ)婦人科オンラインでオンライン相談から始めるか、エクオール サプリメントでセルフケアを並行して取り組むか。どちらのルートも、「なんとなく不調」のまま放置するより確実に前に進める。受診のハードルは、オンライン診療が登場した今、以前より確実に下がっている。
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参考情報