# 毎日しんどいのに理由がわからない。電気を消してから3分、泣き続けた正体はPMSだった
夜11時43分、本町のセブンイレブンでスマホを眺めたまま立ち止まった。
今日で3日連続でチョコアイスを買っている。別においしいから買いたいわけじゃない。ただ、レジに並ぶあの2分くらいが、会社でも部屋でもない「どこでもない場所」になってくれるから、体が自然と引き寄せられる。688円。レシートを袋に押し込んで、大阪本町の夜風の中を歩き始める。月7.2万のワンルームに帰ったら、また電気を消して、布団に潜って、3分だけ泣く。
2月からずっと、それが続いている。
泣く理由が「ない」ことが、いちばん怖かった
最初は原因を探した。今日の会議でうまく話せなかったから。先輩に雑な返しをされたから。クライアントへの提案資料を終電まで作り直したから。でも翌朝起きてみると、どれも「そこまでのこと」じゃない気がする。
電気を消した瞬間に、なんかぐしゃっと崩れる。悲しいわけじゃない。怒ってるわけでもない。ただ、涙が出る。3分くらいで止まる。それで次の朝、またメイクして本町まで電車で出勤する。23区の友達と飲む約束をラインで適当に返して、気づいたら月曜になっている。
「精神的に弱いのかな」と最初は自分を責めた。広告代理店の2年目で、新卒のときより仕事もわかってきて、「もっとタフにならなきゃ」と思ってた時期だった。だから「泣いてる自分」が、余計に情けなかった。
でも違った。弱さじゃなかった。
「しんどい」に、曜日があることに気づいた
転機は3月だった。スマホのカレンダーに自分の体調を記録する習慣をたまたまつけ始めた。「しんどい」「まあまあ」「普通」の3段階で、その日の夜に入力するだけ。続けて2ヶ月経って、グラフを眺めて気づいた。
崩れる日に、規則性がある。
毎月同じ時期、生理の1週間くらい前から、「しんどい」が連続する。その時期は電気を消してからの涙が3分じゃなくて30分になる。帰り道に「消えたい」とふと思う。翌朝、体が重くて起き上がれない。そういう日に有給を使う。今年に入ってもう4日使った。社会人2年目で、こんなに有給を消化するつもりじゃなかった。
PMS(月経前症候群)という言葉は知っていた。でも「少し気分が落ちる」「イライラする」程度のものだと思っていた。こんなにも日常を、普通に出勤する能力を、根こそぎ持っていくものだとは知らなかった。
2月に同期が辞めた夜
田中が辞めた。2月の初め、当日まで誰も知らなかった。「一身上の都合」という退職届が上に出て、翌日にはもうデスクが空いていた。
田中と特別に仲が良かったわけじゃない。でも同期の中で一番近くにいた人で、ランチを週2回は一緒に行っていた。それがいきなりなくなって、昼休みに行く場所が急にわからなくなった。
その夜、転職サイトを開いた。「おすすめ求人」が37件並んでいた。全部閉じた。辞めたい理由もないし、今の仕事を続けたいという確信もない。ただ毎日しんどくて、しんどい理由がわからなくて、そのどっちつかずの状態がもう6ヶ月くらい続いている。
転職サイトを開いて閉じる、という行動をするたびに、少し自分が情けなくなる。どこかに行きたいわけじゃないのに開いてしまう、というのは、何かから逃げたいというよりも、「今ここにいる自分」を確認したい感覚に近い気がした。
「自己管理しろ」という笑顔が、一番刺さる
PMSで有給を使った翌日、部署の年上の女性社員にさらっと言われた。「そういう時期って、自己管理が大事だよね」と。笑顔で。悪意なんてゼロの笑顔で。
その言葉が3日間頭の中でリフレインした。
自己管理したくないわけじゃない。何をすれば「管理」になるのかわからないだけだ。婦人科に行けばいいのかと思ってスマホで検索したら、最寄りの病院の口コミに「初診は2ヶ月待ちです」と書いてあった。本町から通えそうな婦人科を5つ調べて、全部閉じた。平日の昼間に行ける時間なんてないし、何をどう説明すればいいかもわからなかった。
「毎月同じ時期に泣いています。理由はわかりません」と、白い診察室で言う自分が想像できなかった。
話さなくていい相談が、最初の一手だった
4月の初め、Unlaceというアプリをダウンロードした。テキストだけでカウンセラーに相談できる、メンタルヘルスのアプリだ。
電話もビデオも不要。チャットで送って、数時間後に返事が来る。顔を見せなくていい。声を出さなくていい。それが決め手だった。夜中に布団の中から、泣きながら文字を打てる。
「2月から毎晩3分ほど涙が出る。毎月決まった時期だけ30分以上泣いてしまう。生理前の1週間に集中している気がする」と書いた。
返ってきたのは、「それはPMSの感情症状として非常によく見られるパターンです。婦人科受診の前に、まずは症状の記録を2〜3サイクル続けてみることをお勧めします。記録があると婦人科でも診断がスムーズになります」という文章だった。
処方でも診断でも断言でもなかった。でも「私の話を、文脈ごと受け取ってもらえた」という感覚があった。それだけで、少し呼吸が楽になった。Unlaceは月額制で、プランによって違うが1回あたり換算で千数百円前後から使い始められる。コンビニで毎晩買ってたチョコアイスより、ずっと回収できる投資だった。
ホルモンのせいにすることへの、変な罪悪感
正直に言うと、PMSという言葉を自分に当てはめることに抵抗があった。「ホルモンのせいにするな」「メンタルの問題を生理のせいにするのは逃げだ」という空気が、広告代理店には確かにある。そしてその空気が、気づいたら自分の中にも染み付いていた。
でも冷静に考えると、おかしな話だ。血糖値が乱れれば薬を飲む。鉄分が不足すれば補鉄剤を飲む。なのにホルモンバランスが崩れた場合だけ「精神論で乗り越えろ」になる。その非対称さに気づいてから、少し楽になった。
体の問題なら、体に働きかけていい。
カウンセラーに勧められて試したのが、市販薬の「命の母ホワイト」だ。婦人科に行く前に、まず薬局で入手できるPMS対応の漢方・成分が入ったOTC医薬品として広く知られている。朝と夜に飲み始めて1ヶ月。「ゼロになった」とは言えない。でも「30分泣く夜」が「10〜15分」に変わった。それだけでも、翌朝の起き上がり方が違う。
「乗り越え方」より先に必要なことがある
毎日しんどい女性向けの記事を、この半年で何十本も読んだ。「朝7時に起きて日光を浴びる」「毎日30分歩く」「感謝日記をつける」「スマホを夜9時以降に見ない」。全部正しいと思う。でも1回も実践できなかった。
体が本当に崩れている時期に「正しい生活習慣」を始めようとするのは、足首を骨折している人に「ストレッチをしろ」と言うようなものだ。動けない。意志の力でどうにかなる段階を、とっくに超えている。
順番があった。
最初に必要だったのは「なぜ毎月この時期だけ崩れるのか」という原因の把握だった。次に「その原因に対して体から働きかける」こと。Unlaceで「これはPMSだ」と気づいて、命の母ホワイトで少し底を上げて、ようやく「夜11時には部屋に帰ってみよう」が実行できた。コンビニに毎晩吸い込まれなくなった日が、少しずつ増えた。
乗り越え方は、「しんどい理由」を正しく特定してからでないと機能しない。
3年目が来る前に、一度だけ体に正直に聞いてみてほしい
毎日しんどくて、泣いている理由がわからなくて、でも誰にも言えない。職場では笑えている。SNSには投稿できている。でも夜に電気を消すと崩れる。そういう状態なら。
「自分が弱いから」という説明は、今すぐ捨てていい。
Unlaceはアプリをダウンロードして登録5分、テキストだけで始められる。声を出さなくていい。カメラをオンにしなくていい。深夜に布団の中から送っていい。まず「自分の話を、文脈ごと受け取ってもらう」という体験をするだけでいい。それが最初の一手として、今の自分には一番軽かった。
毎月崩れる時期に規則性があるなら、PMSを疑って命の母ホワイトを試してみる価値はある。婦人科へのハードルが高いなら、まずOTCで体の反応を観察する。それが「婦人科で説明するための記録」になる。どちらも、明日から一人でできることだ。
3年目になる前に、一度だけ自分の体に聞いてほしい。「これ、あと何年続けられる?」と。
答えが出なくてもいい。聞いた、という事実が、最初の一歩になる。
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