電気を消した後の3分間
今年の2月から、寝る前に決まって泣く。
理由がわからない。仕事で怒られたわけじゃない。誰かと喧嘩したわけでもない。ただ電気を消して、スマホを伏せて、布団に入った瞬間に、胸のどこかから何かが溢れてくる。
大阪・本町のワンルーム。家賃7万2千円の部屋で、毎晩3分だけ、理由のわからない涙を流していた。
広告代理店に入って2年目。同期が一人辞めて、業務は増えた。上司に「使える後輩」と思われたくて、無理をしている自覚はあった。でも、それだけじゃない、と気づいたのは5月のゴールデンウィーク明けだった。カレンダーを遡って気づく。涙が止まらない日には、必ずパターンがあった。
生理の、7〜10日前だけだった。
—
「気合が足りない」と思い続けた1年間
正直に言うと、長い間これを「自分のメンタルの弱さ」だと思っていた。
社会人2年目にもなって感情のコントロールができない。仕事のストレスを引きずる自分が甘い。有給を使うたびに申請フォームに「体調不良」と書くけれど、別に熱があるわけでも、頭が割れるように痛いわけでもない。ただ、起き上がれない。会社に行くために靴を履く、その動作が、山を一つ越えるくらいの消耗感になる。
今年だけで有給を7日使った。入社から使った総数は13日。そのうち少なくとも8日は、生理前の1週間に集中している。
上司には言えない。「生理前なんで」って言える雰囲気じゃない。同期の女の子には一度だけ話したら「私もそういうのある、でもそういうもんじゃない?」って返ってきて、それ以降は黙った。「そういうもん」で片付けられた気がして、少し悔しかった。でも反論できなかった。こっちも自分がおかしいのか普通なのか、確信が持てなかったから。
朝7時半に堺筋本町の改札を通るとき、隣を歩いてるOLたちが全員しゃんとして見えた。なんで自分だけ、体の底に砂が溜まってるみたいに重いんだろう、と思った。
—
PMSという名前を知っていたけど、自分のこととは思わなかった
PMS(月経前症候群)という言葉は知っていた。でも正直、「生理前にイライラする」程度のことだと思っていた。私の場合、イライラよりも「崩れる感じ」が強い。突然涙が出る、判断力が落ちる、何もしたくなくなる、炭水化物を異常に食べたくなる、眠いのに眠れない。これがPMSだとは思っていなかった。
確信したのは、婦人科に行ってからじゃなかった。スマホで「生理前 泣く 理由」と検索した夜中の1時、ヒットした記事の中に書いてあった。
排卵後から生理前にかけて、プロゲステロンというホルモンが急増する。このホルモンは脳のGABA受容体に作用し、精神的な不安定をもたらすことがある。さらに、幸福感に関わるセロトニンの分泌が相対的に落ちるため、軽い抑うつ状態になりやすい。症状が重い場合はPMDD(月経前不快気分障害)と分類され、治療の対象になる。
身体の話だった。気合の話じゃなかった。
その記事を読んで、初めてちゃんと泣いた。3分じゃなく、多分15分くらい。今度は涙の理由がわかる涙だった。
—
婦人科の予約フォームに「気分の落ち込み」と書いた朝
次の日、仕事前にコンビニでホットコーヒーを買って、スマホで近くの婦人科を調べた。本町から地下鉄で2駅のクリニック。Googleマップのレビューに「話を聞いてくれる先生」と書いてあったからそこにした。
予約フォームの「受診理由」に「生理前の気分の落ち込みが気になる」と書いた。送信ボタンを押してから、少し手が震えた。「こんなことで婦人科に行っていいのか」という感覚があった。婦人科って、妊娠か病気の人が行くところだと思ってたから。
でも、行ってよかった。
先生は淡々としていたけど、否定しなかった。問診票を見て、「ホルモンバランスの影響は確かにある、まず記録をつけてみましょう」と言ってくれた。体温と症状をスマートフォンのアプリで記録して、3ヶ月分のデータを持ってきてほしいと。
その日から、生理周期アプリをちゃんと使い始めた。記録することで、自分の「崩れる予告」が見えてくるようになった。生理予定日の9日前くらいから黄色信号、6日前から赤信号。カレンダーの上に、自分の感情の地図が浮かび上がってきた感覚があった。
—
漢方を3ヶ月飲み続けた話
婦人科の先生が最初に勧めてくれたのが漢方だった。ピルの前に、まず体質改善から試してみようということで、ツムラの当帰芍薬散を処方してもらった。
正直、漢方なんて「お年寄りが飲むもの」のイメージがあって、最初は半信半疑だった。粉末を水で飲む感じも慣れなかった。でも、3ヶ月飲み続けたら変化が出てきた。
劇的じゃない。涙が出なくなったわけじゃない。でも「崩れ始めの予兆」がわかるようになった。体のなかに早期警報システムができた感じ、と言えばいいか。あ、今週そういう週かも、と2日前に察知できるようになると、仕事の予定を少し調整できる。大事なプレゼンをその週に入れない。残業を最小限にする。飲み会の約束を断りやすい状態にしておく。
それだけでも、有給の消費が減った。
漢方と並行して、PMSに向けたサプリも調べるようになった。西洋ハーブのチェストツリー(西洋ニンジンボク)は、プロゲステロンのバランスに作用するとされていて、PMSへの効果が期待されている成分のひとつだ。ルナフェミンはチェストツリーをベースにしたサプリで、ホルモンバランスを穏やかに整えることを目的に継続して飲むタイプ。毎月続けることで底上げされていく感覚があり、「どん底まで落ちない」という感じが出てきた。服用開始から2ヶ月目あたりから変化を感じ始めたので、最低3ヶ月は続けるつもりで始めることをすすめる。
—
転職サイトを開いては閉じる夜のこと
身体への対処を始めながら、もうひとつ気づいたことがあった。
PMSの症状と、純粋な仕事の悩みが、完全に混ざり合っていた。同期がまた一人辞めたあと、「私もそろそろ限界かもしれない」という気持ちが強くなった。転職サイトを開いては閉じる。求人を見ては「でも自分に何ができるんだろう」と思って閉じる。この繰り返しが毎晩22時から続いた。
「これって逃げてるのかな」「でも逃げていいのかな」「でもこのまま消耗していいのかな」のループが止まらなかった。PMSで感情が不安定なせいで仕事が嫌になっているのか、本当に環境が合っていないのか、自分では判断できなかった。
オンラインカウンセリングを試したのは、そのタイミングだった。
Cotree(コトリー)というサービスで、月1回から利用できる。50分のセッションを自宅のベッドで、パジャマのまま受けた。最初は「話すだけでいいのかな」と思ったけど、話すだけで十分だった。
カウンセラーに「PMSで崩れている時期の感情と、安定期の感情を分けて見てみましょう」と言われて、はっとした。それまで全部ひとくくりで「自分がしんどい」と感じていたのが、「ホルモン由来の崩れ」と「本質的な仕事への不満」に分解されていった。
Cotreeはカウンセラーのプロフィールに専門領域が書いてあって、PMSや女性のメンタルヘルスに詳しい人を選べる。私は「女性のライフイベントと心理」に詳しいと書いていたカウンセラーを選んだ。「女性特有の身体の変化が感情に影響することは珍しくない」と最初のセッションで言われて、また少し泣いた。
—
安定期の「辞めたい」と崩れた状態の「消えたい」は別物だった
3ヶ月カウンセリングを続けて、わかったことがある。
生理前の1週間、私の「仕事辞めたい」の強度は10のうち9くらいになる。でも安定期のそれは、10のうち4くらいだ。4は「転職活動を始める気持ちがある」で、9は「今すぐここから逃げたい、もう何もかも嫌だ」に近い。同じ言葉でも、中身がぜんぜん違う。
PMSの崩れを「ホルモンのせい」と切り分けると、残ったものの輪郭がはっきりする。残った4の部分は、ちゃんと向き合う必要がある本物の悩みだった。
その整理ができてから、転職活動を「崩れていない週」に限って進めると決めた。やることが増えたわけじゃない。むしろタスクが減った。生理前の1週間は、意思決定をしないと決めた。重要なメールの返信は翌週に回す。SNSで誰かの転職エントリーを読んで凹む時間をやめる。この週は「備える週」として過ごす。
—
「そういうもんじゃない?」に答えられなかった日から
同期の女の子が言った「そういうもんじゃない?」という言葉を、今でも時々思い出す。
たぶん悪意はなかった。彼女も似たような経験があって、折り合いをつけてやり過ごしている、そういう意味だったんだと思う。でも私には、「折り合いをつける」前に、まず「これって何なんだ」を知る必要があった。
PMSの症状の重さには、個人差がある。月曜の朝に少し気分が落ちる程度の人もいれば、仕事に行けなくなる人もいる。私は後者に近かった。でもそれは気合の問題でも、繊細さでもなく、ホルモンという物質の問題だった。
物質の問題なら、物質で対処できる。
—
あの3分間が、今は少し変わった
電気を消した後の涙は、まだ完全にはなくなっていない。でも今は、理由がわかる。スマホのアプリが「今週は注意」と教えてくれる。「ホルモンのせいだ」と思えると、沈んだ感情に飲み込まれなくなった。客観的に見られるようになった分、3分が2分になった。気持ちの違いは、思ったより大きかった。
生理前の1週間を「なかったことにする」のは無理だ。でも「備える週」に変えることはできる。この発想の転換が、有給を1枚節約するより先に、自分への見方を少し戻してくれた。
—
もしあなたが「毎月同じ時期に崩れる気がする」「理由がわからない涙が止まらない」「これって性格の問題なのかな」と思っているなら、まず婦人科に行くことを本気でおすすめする。話を聞いてもらうだけでも、かなり変わる。
漢方から始めるなら、自己判断で市販品を選ぶより、処方してもらうほうが体質に合ったものを選べる。PMSサプリを使うなら、ルナフェミンは3ヶ月継続が基本なので、覚悟を持って始めること。効果を感じ始めるのに時間がかかるが、続けた先に「底の深さが変わる」感覚がある。
そして、身体だけじゃなく頭の中も整理したいなら、Cotreeのようなオンラインカウンセリングを月1回から使ってみることを推薦する。自宅で受けられる、50分から始められる、PMSや女性のメンタルに詳しいカウンセラーを指名できる。この3点が揃っているサービスは多くない。
物質の問題に、物質と言葉で向き合う。それが今の私の対処法だ。
💕 編集部が本気で試した恋活・婚活サービス
マッチングアプリで疲れた経験をもとに、編集部が実際に継続できたサービスを3つ厳選しました。
マリッシュ
30代以上の本気層に特化。バツイチ・シンママ応援制度あり。女性は完全無料で、真剣に結婚を考える人が多い。
公式サイトで無料登録 →
マッチングフォト
マッチングアプリ専門のプロ撮影サービス。いいね数が平均3倍に。全国対応、自然光ロケーション撮影で素人感ゼロ。
撮影プランを見る →
ヒーローマリッジ
高収入・ハイスペ男性との真剣婚活に向けたオンライン結婚相談所。30代以降で結婚を現実的に進めたい女性向け。
無料相談を確認する →
※ 本セクションはアフィリエイトリンクを含みます。紹介内容は編集部が独自に評価しています。