横浜の自宅、朝7時半。1歳になったばかりの娘がようやく寝入った隙に、37平米のリビングで洗濯物を畳んでいた私は、くしゃみを一つした。
瞬間、下着が湿っているのに気づいた。
家賃12万円のマンション。窓の外は港南台の住宅街。哺乳瓶の消毒液がテーブルに置いてある。私はその場に立ったまま、少し泣きそうになった。理由は悲しいからじゃなくて、「また」という感覚があったから。
私は女性誌の編集者だ。医学監修付きの記事を日常的に扱っていて、「産後の尿漏れには骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)が有効」という文章を何度も書いてきた。なのに自分がなってみると、正直なところ、どこを収縮させているのかすらあやふやだったのだ。
※この記事は医学的・一般的情報を提供するものであり、診断・治療を目的としません。症状が続く場合は医師・婦人科・かかりつけ医に相談してください。
ケーゲル体操とは、骨盤底筋(恥骨から尾骨をハンモック状に支える筋群)を意図的に収縮・弛緩させる運動で、1948年に産婦人科医アーノルド・ケーゲル博士が考案した、尿漏れ・骨盤臓器脱の予防と改善を目的とした世界的に普及しているトレーニングである。
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「正しいケーゲル」を知らないまま1年間やっていた

産後3ヶ月ごろから、寝る前に10回、毎晩「ケーゲル体操をしている」と思っていた。YouTubeで見た動画を参考に、お尻の穴のあたりを締める動きを繰り返していた。毎日続けていた。でも現実には、くしゃみのたびに下着を確認する11ヶ月が続いた。
12月の火曜日、娘が11ヶ月になった週に、私はようやく横浜市内の婦人科を予約した。初診料込みで4,200円。先生に開口一番聞かれた。「ケーゲルはやっていますか?」「はい、毎晩やっています」と答えると、「どこを締めていますか?」と続けて問われた。
「……お尻の穴の内側、でしょうか」
先生はちょっと間を置いた。「膣の入り口を、内側・上方向に吸い上げる感じが正しいです。お尻を締める動きとは、使っている筋肉が違います」
私は1年近く、お尻の筋肉を鍛えていたのだ。
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どこを締めればいい?骨盤底筋の地図を引き直す

骨盤底筋群とは、膀胱・子宮・直腸を下から支える複数の筋肉の総称だ。恥骨結合から尾骨・坐骨へとハンモック状に張り、腹圧(くしゃみ、咳、笑い、ジャンプなど)がかかるたびに瞬時に収縮して臓器と尿道を固定する。
出産で赤ちゃんが産道を通過する際、この筋肉群は大きな負荷を受ける。自然分娩では骨盤底筋が最大3倍以上に引き伸ばされるという研究が報告されており(DeLancey JO, Am J Obstet Gynecol, 2003)、回復には平均6〜12ヶ月かかるとされている。帝王切開でも、妊娠期間中の胎児の重みで骨盤底筋は継続的な圧迫を受けるため、ダメージがゼロというわけではない。
「お尻ではなく膣の入り口」という感覚を掴む最も簡単な方法は、排尿を途中でぴたりと止めようとする感覚を思い出すこと(実際の排尿中に行うのはNG)。あるいは、タンポンが入っている状態をイメージして、それを内側に引き込もうとする感覚。お腹・お尻・太ももが脱力したまま、その奥だけが収縮しているのが正しい動きだ。
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正しいやり方を手順で確認する
婦人科で教わった手順はシンプルだった。
① 仰向けに寝て両膝を立て、全身の力を抜く
姿勢を寝た状態にすることで、重力の影響を排除でき、骨盤底筋の収縮感覚が掴みやすくなる。座位・立位は収縮の感覚が安定してきてから移行する。
② 膣の入り口を「吸い上げる」ように内側・上方向に収縮させる
お腹を凹ませない、息を止めない、お尻に力を入れない。この3つが守れているかを毎回確認する。
③ 3〜5秒キープし、完全に脱力する
「ゆるめる」工程が非常に重要で、締めっぱなしにすると筋肉が過緊張になり、逆に痛みや機能低下の原因になることがある。
④ 10回1セット。1日3セットを目標に
私の場合、先生から「まず正しい収縮を確認してから、10回×3セットを8週間続けてください」と指示された。継続性が最優先で、量の多さより動きの正確さが重要だというのが先生の一貫した主張だった。
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いつから始めていい?帝王切開でも効果はある?
コクランレビュー(Bø K et al., 2015)では、産後48時間以内の早期開始が骨盤底筋回復に有効である可能性が示唆されている。帝王切開後でも同様の報告がある。日本産科婦人科学会の産婦人科診療ガイドライン(産科編)でも、産後の骨盤底筋トレーニングは推奨されている介入の一つとして明記されている。
「産後すぐ動けるの?」という疑問はよく出るが、ケーゲル体操は入院中のベッドの上からでも開始可能で、体への負荷が極めて少ない点が大きな特徴だ。傷の回復が気になる場合は産科スタッフや担当医に確認してから始めるとよい。
1日の目標回数については、ガイドラインや研究によって幅があるが、1日30〜80回収縮を3ヶ月継続することで尿漏れ症状の改善が見られたケースが複数報告されている(ただし個人差がある)。数より「正確な動き」を優先することが、私が婦人科で受けた最も重要なアドバイスだった。
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ここで一度、整理する
ケーゲル体操によって期待できる効果として、複数の査読論文で報告されているのは以下の4点だ。①腹圧性尿失禁(くしゃみ・咳・笑いによる尿漏れ)の改善、②骨盤臓器脱の予防と進行抑制、③産後の骨盤底筋機能の回復促進、④骨盤底筋の収縮力回復に伴うパートナーとの親密な時間の質的変化への関与。
ただし、「確実に治る」「全員に効く」というものではなく、動きの正確さと継続性、場合によっては専門家によるバイオフィードバックが必要になることもある。特に重症の尿漏れや骨盤臓器脱の症状がある場合は、セルフトレーニングだけでなく医療機関への相談が優先される。
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自分でやっているかどうか、どうやって確認する?
これが一番難しい問いだと思う。正しく収縮できているか、自力では判断しにくい。
最も精度が高い確認方法は、婦人科・泌尿器科でのバイオフィードバック療法(センサーで骨盤底筋の収縮を可視化する検査)だが、全ての施設で受けられるわけではない。
簡易的な自己確認の方法としては、指を膣の入り口に軽く当てて収縮時に「引き込まれる」感覚があるかを確認する方法が紹介されることがある(産後の傷が完全に回復してから)。ただしこれも自己流になりやすいため、症状が改善しない場合は専門家に確認を取るのが確実だ。
婦人科オンライン診療(CLINICSやLINEヘルスケアなどのプラットフォーム)を使えば、自宅から15〜20分の問診で「今の自分の動きが合っているか」を確認できる。交通費と時間の節約になり、「こんなことで受診していいのか」という心理的ハードルも下がる。産後の骨盤底筋問題を放置すると、閉経後の骨盤臓器脱リスクが有意に高まることが報告されており(Hendrix SL et al., WHI Study, 2002)、早期の介入が長期的なQOLに直結する。
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パートナーとの時間が変わるか、という話
これを婦人科の先生に聞いたのは、診察のいちばん最後だった。少し恥ずかしかったが、聞かないまま帰る方が後悔すると思った。
「骨盤底筋の機能が回復することで、性生活の質的変化を感じる方は少なくないと複数の研究で示されています。収縮力が戻ることで感覚が変わったと報告されるケースがあります」という答えだった。
産後から夫との親密な時間が変化したのは、正直なことを言えばそうだ。自分の体が「以前と違う」感覚がある中で、どう向き合えばいいかわからない時期が続いた。ケーゲルを正しく続けていくにつれて変わったのは、数字や症状だけでなく、「自分の体を自分で管理できている」という感覚だった。これは個人の体験であり、効果を保証するものではない。
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セルフケアの習慣を一緒に作るために
ケーゲル体操と並行して、骨盤底筋の「意識づけ」を補うフェムケアグッズを取り入れる選択肢がある。
iroha(イロハ) は、女性の設計チームによって開発されたフェムケアブランドで、セルフケアの入り口として多くの女性誌でも紹介されている。医療機器ではないが、骨盤底筋への意識を高めるセルフケアの習慣化を目的としたプロダクトとして、清潔感のある設計と素材が特徴だ。私が編集者として信頼できると思うのは、「女性のために女性が作っている」という開発背景が、プロダクトの質感に一貫して反映されているからだ。ケーゲルの前後に自分の体と向き合う時間として取り入れることで、継続のきっかけになるセルフケアの一環として活用できる。
一方で、「自分でやっているケーゲルが正しいか不安」という場合は、まず婦人科オンライン診療で動きの確認を取ることを強くすすめる。習慣より先に「正しさ」が担保されている方が、結果として近道になる。
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くしゃみを、もう確認しなくなった日のこと
あの朝から8週間後、私はリビングで洗濯物を畳みながらくしゃみをした。下着を確認しなかった。
完全に解決したわけではない。でも「正しい場所を意識する」ことができるようになってから、体の変化に気づけるようになった。それは、編集者として骨盤底筋を書いていた頃には持っていなかった、自分自身の体への解像度だった。
もしあなたが産後の尿漏れ、骨盤底筋の感覚の変化、あるいはパートナーとの親密な時間へのぼんやりした不安を抱えているなら——まず一度、「私のケーゲルは正しいですか?」と婦人科(オンラインでも可)に聞いてみてほしい。 その確認だけで、私の11ヶ月は3ヶ月に縮まったかもしれないと今は思っている。
iroha のセルフケアグッズと婦人科オンライン診療を組み合わせることが、産後の骨盤底筋ケアに対して現実的かつ継続しやすい選択肢だと、私は自分の体験から言える。
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