電気を消してから3分
スタンドライトを消した瞬間に、また来る。
涙だ。
悲しいわけじゃない。今日特に嫌なことがあったわけでもない。ただ目から、勝手に出てくる。3分ほど流れて、気づいたら止まっている。翌朝はアラームが鳴り、何事もなかったように着替えて出社する。
それが毎晩続く——そんな状態に心当たりがあるなら、この記事はあなたのためのものだ。
「夜 理由もなく 涙が出る 20代 女性」で検索して出てくる記事は、たいてい最後に同じことが書いてある。
「自己肯定感を高めましょう」
「自己肯定感」という言葉が、一番しんどい
この言葉が、悩みの中で一番しんどい——そう感じる人は多い。
「あなたの自己肯定感が低いから泣く」——そう言われると、問題が自分の性格にあるように聞こえる。毎晩泣くのも、有給がどんどん減っているのも、転職サイトを開いては閉じているのも、全部「あなたが弱いから」と言われている気になる。
自己肯定感系の記事が勧めることを、ほぼ全部やってみる。肯定的な日記を3週間続ける。「今日の自分を褒める」という習慣を7日やる。「自分を責めるのをやめよう」と付箋に書いて洗面台の鏡に貼る。
結果はどうなるか。
「3週間日記を続けたのに何も変わっていない」という新しい証拠が積み上がるだけだ。「こんなことを7日続けても何も感じない自分」という気づきが増えて、余計に落ちる。
自己肯定感を「高める」系コンテンツの本質的な問題は、精神と思考だけで解決しようとするところだ。思考を変えろ、感情を管理しろ、ポジティブに捉えろ。でもそのどれもが、「脳の使い方」を変えることだけに集中している。
体のことを、誰も教えてくれなかった。
生理前の1週間が、人を「別人」にする
気づくきっかけは、生理が来た翌日の朝だ。「あれ、昨日まであんなに落ちてたのに、なんで今日は普通なんだろう」と思う瞬間が来る。
振り返ると、毎月生理の7〜10日前から明確にモードが変わっている。有給を使ったのも全部その時期。転職サイトを開いたのも、「この仕事向いてない」という確信が強くなったのも、上司の一言を夜中まで引きずって眠れなかったのも、ぜんぶ同じ週だ。
逆に言えば、生理が来た瞬間から体がリセットされる。
PMSという言葉は知られているが、「生理前にちょっとイライラする」くらいの認識で止まっている人が多い。でも実際は「ちょっと」では済まないことがある。生理前の1週間、本当に別の人間になる。泣きやすい、集中できない、自己評価が激落ちする、未来への絶望感が強くなる。それは「自己肯定感が低い」のではなく、ホルモン変動による脳内環境の変化だ。
「性格が問題なのではない。弱いのでもない。毎月一定の期間、脳内の化学バランスが変わる。それに名前をつけると、PMSだった」——そう捉え直せると、初めて「じゃあ何をすればいいか」が具体的になる。
思考を変えるのをやめて、体から変える
「自己肯定感を高めよう」ではなく、「今月のホルモン状態を整えよう」に目標を変える。
最初に試したいのがPMSサプリだ。チェストツリー(西洋ニンジンボク)という成分が入ったものを選ぶ。プロゲステロンのバランスをサポートすると言われているハーブ由来の成分で、欧州では古くから月経前の不調に使われている。1ヶ月試した段階では「少しマイルドになった気がする」程度でも、2ヶ月目に入ると生理前の「落ちる深さ」が変わってくるという声が多い。劇的ではないが、「最悪な週」が「しんどい週」になる。有給の消耗ペースが変わる。
次に検討したいのが、オンラインカウンセリングのcotreeだ。
最初は抵抗があるだろう。「カウンセリングって、相当追い詰められた人が行くもの」という思い込みがある。でも毎晩3分泣くことは、友達には言えない。職場では絶対言えない。親にも言えない。どこにも出力できていない状態が続く。
cotreeはLINEのような感覚でカウンセラーにテキストを送れる。「理由がわからないのに泣く。これはおかしいですか」——その一文から始めていい。
返ってくるのは、たとえばこんな言葉だ。「おかしくありません。PMSと慢性的な睡眠負債が重なると、感情調節機能が低下しやすい状態になります。あなたが感じていることには、生理的な理由があります」。
「つらいですね、一緒に頑張りましょう」ではなく、情報として返ってくる。それが一番欲しかった、という人は多い。
セルフケアを「自分を甘やかすこと」だと思っている間は
世間で言われるセルフケアは、バスボムだったりアロマキャンドルだったり、フェイスマスクだったりする。それ自体を否定するつもりはない。でも薬局でパックを買って、アロマディフューザーを買って、それで「整った」かというと、そうならないことが多い。
正確には「リカバリー」と「根本対処」を混同していた。バスボムは疲れた夜の回復には機能する。でも毎月来るホルモンの嵐には、毎月流されるだけだ。
本当のセルフケアは、自分の状態を把握して、不足しているものを補うことだ。
睡眠が足りていないなら寝ること。ホルモンバランスが崩れているならそれを整えること。一人では処理できない量の感情が溜まっているなら、外に出すこと。
有給を使わずに出社し続けることを「頑張り」と呼んでしまう人は多い。「同期が辞めた分まで踏ん張らないと」「自分が抜けたら迷惑をかける」という論理で、毎月1〜2日の有給を生理前の地獄週間に消費する。誰かに褒められる「頑張り屋さん」を演じながら、体は正直で、電気を消した瞬間に涙として出てくる。
それはセルフケアじゃない。体へのツケ払いだ。
具体的にやること
手順はこうだ。
月経周期アプリで、生理予定日と「生理前警戒期間」を色分けする。D-8(生理予定8日前)からD-1までを赤でマークして、毎朝確認する。その期間に「自分ってダメだ」「この仕事向いてない」「将来どうなるんだろう」という思考が来たら、まずアプリを開いて日付を見る。「今日はD-6だ」と確認できると、その思考の内容に乗り続けることが減る。思考が消えるわけじゃない。でも「この思考は今週の特産品だ」と少し距離を置ける。
PMSサプリは3ヶ月目まで続ける。生理前の「泣く夜」の頻度が変わり、毎晩ではなくなる。それでも電気を消して泣く夜はある。でも「また来た、今日は何日目、あと何日したら戻る」と分かる状態になると、夜の重さはかなり違う。
cotreeのカウンセリングは月2回程度。毎月定例ではなく「今月特にきつかった」という月に使う安全弁のような感覚でいい。カウンセラーとのやりとりで、「今の状態はこういう構造になっている」という言語化が進む。それだけで、翌朝の感触が変わる。
「自己肯定感を高めよう」はもう手放す。代わりに「今週の自分の状態をモニタリングする」をやる。
これを読んでいるあなたへ
もし今、電気を消すたびに泣いているなら。
生理前の1週間だけ「別人」になる感覚があるなら。
「自己肯定感が低い自分」という診断を自分に下して、それを変えられない自分にさらに落ちているなら。
精神論を手放してほしい。
「もっとポジティブに」「自分を好きになって」は、骨折した足に「歩け」と言うのと同じことがある場合がある。まず体の状態を把握して、必要なものを補う。それがセルフケアの本当の入口だ。
cotreeのオンラインカウンセリングは、スマホから今日中に始められる。対面クリニックと違って、予約もやりとりも、自室のベッドの上からできる。PMSや感情の波を誰かに聞いてもらうだけで、夜の重さは変わることがある。カウンセラーは「つらいですね」ではなく、情報として返してくれる。それが欲しい人には、合う。
PMSサプリを試すなら、チェストツリー配合のものを1〜2ヶ月続けて体感を確認することから始めるといい。成分と体質の相性があるので、飲んですぐ何かが変わるものではない。でも生理前の「最悪な週」が「しんどい週」に変わるだけで、仕事も有給も、感情の消費量も、変わる。
「自己肯定感が低い自分」は、性格ではなく状態かもしれない。
状態は、変えられる。
本町の部屋の電気を消して、今夜泣いても。それは、あなたが弱いんじゃない。
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